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 朱尾は鉄砲に弾を入れつつ、縦長に割かれた干し肉を齧っていた。

やけに黒々とした肉であった。


「飯、食ってきてねえの?」


 酒童が問いかけると、朱尾はこくんとうなずいた。


「先輩に携帯で呼ばれるまで、家で寝転がってたんで」


 弾を詰め終えて、朱尾は炯々と光る満月を仰いだ。

 酒童は疲れ切った足を休ませるように、その場に腰を下ろす。

 酒童たちは昼下がりから、県庁所在地である隣町の拠点へと向かい、班長と共に昼の事件について報告した。

それから面倒な報告書を書く羽目になり、夕方より少し前に隣町から帰ってきたのだ。

 コンビニの五目にぎりをひとつに食べただけだが、もう精神的な疲労で、空腹感を感じなかった。


「なんかそっちは、昼に大変だったみたいっすね」


 前代未聞の異常事態だというのに、朱尾の語調はずいぶんと素っ気ない。

 今日の天気予報は晴れだったのに、雨が降ってきた。

 そう口にする風だった。


「昼から、ずっと大変だった」


 酒童はため息を零した。