2人の肩をかっちりと掴み、酒童は仲裁する。
普通ならここで互いが謝るのが筋と言うものだが、両者とも、頑として口を閉ざした。
「……」
酒童はそんな両者の頭に手を置くや、強制的に一礼させた。
「はい終了。そこまで。
だが続きはやるなよ」
頭を押さえつけられた両者は、どちらも反発の意思をあらわにしなかった。
互いを睥睨しつつ、軽くうなづく。
「よし」
酒童は両者の頭から手を放す。
「もうすぐ夜だ。
桃山と榊は、槿花山(きんかざん)の方角のビルへ。
俺と朱尾はその向かいのビルに行く」
「なんで酒童さんとそいつが一緒なんですか」
榊が異議を唱える。
「俺が朱尾に指示を出すから、一緒にいる必要があるんだ。
つうか、おまえ茨が入ってきた時は、そんなこと言わなかったろ」
成長しても、未だに甘えてくる子供に言うような台詞だ。
酒童の言葉に、榊は頬を膨らます。
(こいつ、まさか)
酒童は唾を呑み込んだ。
もしかすると、朱尾の訓練生時代の事件が、彼の耳にも入っているのかもしれない。
榊がその話を鵜呑みにしているのなら、朱尾をよく思っていないと理由しても充分にあり得る。
(風評被害、ってやつか)
もちろん、酒童が真実を知っているわけではないのだから、朱尾が噂による被害をこうむっているのかどうかはわからないのだが。


