「青木ってのは、あの子の名前か?」
「ああ。
呪法班でも、もっぱら事務や雑務に回っている人だ」
天野田曰く、呪法班の中でも、あまり術式の素質のない人材は、力のある呪法班員の補佐についたり、情報処理や、刀の管理といった事務に回ることが多いという。
「あいつ、呪法班員に知り合いなんていたかな」
「君が知っている朱尾くんが、彼の全貌とは限らないじゃないか。
これが、君の知らない朱尾くんだった。
それで納得するしかないじゃない?」
天野田は、あまりこのことについて、深く関わる気はないらしい。
ずいぶんと投げやりな言動だ。
(俺の知らない、朱尾か……)
人間、裏表というのは付き物なのだから、むしろ朱尾に裏があったって、なんらおかしいことではない。
それでも、酒童は理解に困った。
何があって、どんな経緯で、2人はどんな関係で、なんの話をしていたのか。
この数分で起こった出来事は、酒童の中に更なる謎を産みつけた。


