「いや、嘘じゃないって……」

「へ? あ、違うんです。今のは独り言です」


やだ、私ったら声に出しちゃったみたい。


『ドジなんだから……』

うっさい!


いきなり『素敵……』とかほざいたのは、私の中のもう一人の“わたし”。たぶん何かの弾みで私から解離したもう一つの人格。そう、つまり私はいわゆる二重人格な人なのだ。


『その事なんだけど……』

なに?

『実は“わたし”が主で、あなたが“わたし”から解離した人格、という可能性もあるんじゃない?』

はあ? そんなわけないでしょ?

『どうしてそう言い切れるの? 何か証拠でもあるの?』

それは……ないけど。

『でしょ? でも、“わたし”が主という証拠もないわ。だから、どっちが主かなんて考えないで、対等に仲よくして行きましょうよ?』

という事は、この体も半分ずつ使うって事?

『ううん。それは今まで通り、あなたがメインで構わないわ』

そう? よかった……

『ただし、どうしてもの時は強制的に“わたし”が使わせてもらうわ』

そんなの、今までもそうでしょ? 今更じゃない?

『そうね。ああ、楽しみだなあ』

“楽しみ”って、あんたね……


何か嫌な予感がするなあ。