私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~

「入っていいかな?」

「う、うん。もちろん」


剛史さんは中に入ると、すぐに自分でドアに鍵を掛けた。


「無事で良かった」

「剛史さん……」


剛史さんの顔を見ていたら、まるでそれまで待っていたかのように私の目から涙が溢れだし、思わず私は剛史さんに抱きついた。

「怖かったの……」

「だよな? よく頑張ったよ、“裕美ちゃん”」


剛史さんはそっと私の肩を抱き、頭を優しく撫でてくれ、私は彼の広くて硬い胸に顔を埋め、子どものように泣きじゃくった。


しばらくそうしていたら、ようやく涙が止まった。


「落ち着いたかい?」

「ごめんなさい」


私ったら、子どもみたいに泣いたりして、恥かしいわ……


「いや、いいんだけどさ、ちょっと暑いかなあと思ってさ、“裕美ちゃん”」

「え?」


言われてみれば確かに暑いし、剛史さんの背中は汗ばんでいて、シットリを通り越してベットリしていた。私は気が動転していて、エアコンを入れるのを忘れていたらしい。

私は名残惜しい気がしないでもなかったけど、剛史さんから体を離した。


「すぐにエアコンを入れますね」

「おお」

「あ、それと……」

「ん?」

「私は裕美です。 “裕美ちゃん”ではなく」