私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~

「えっ?」

「“わたし”って、そんなにつまらないですか?」

「き、君は裕美ちゃんか?」

「はい……」


“わたし”は今にも泣き出しそうな、悲しい顔をした。

あーあ、知らないんだ。


「もしかして、君達は意識を共有してるのかい? 感覚なんかも……」

「そうよ?」


と答えたのは私。“わたし”の方は、岩崎さんに言われた言葉がショックで、しばらくは使い物にならないと思う。可哀想だけど。


「不完全なんだな」


そう呟いた岩崎さんの声は小さかったけど、私の耳にはしっかりと届いた。


「悪かったわね、出来損ないで……」

「あ、いや、別にけなしたわけじゃないんだよね。あはは」

「ところで、完全な二重人格ってどういうものなの?」

「知りたいかい?」

「ええ」

「じゃあ教えてあげるけど、結構怖いよ。身近に例もあるしね」


岩崎さんはそんな意味深な事を言うと、ウイスキーをゴクンと一口飲み込んだ。