「あそこで座って待とうよ?」


岩崎さんが指差した先を見たら、そこはガラスの扉で仕切られた喫煙所だった。

冗談じゃない。あんな所に入ったら急性ニコチン中毒で死んでしまうわ。

拒否していいわよね?

『ダメ!』

勘弁してよ……

『短い時間なんだから、我慢して』

とほほ、だわ……


岩崎さんは私の返事を待たずにさっさと喫煙所へ入って行き、私は仕方なく彼の後に着いて行った。

まったく俺様なんだから、大キライ!


「はいよ」


中に入ったら、なぜか岩崎さんが私にタバコを差し出した。


「えっ?」

「一本やるよ。あんたも吸うんだろ?」

「す、吸いません! そんなもの……」

「そうなのか? じゃあ、なんで入って来たんだよ?」

「あなたが入ったからでしょ? 私の返事も聞かないで……」

『ちょっと、そんなきつい言い方しないでよ……』

うっさい!


「そうか、ごめん。でも俺は吸わせてもらうよ。ヤニ切れでイライラしてっから」

「ご勝手に」

『もう……』


岩崎さんはタバコに火を点けると、フーッと煙を口から吐き出した。たちまち嫌な臭いがしたけど、本人は気持ち良さそうだ。


『カッコいいわ……』

どこがよ!?