ハッとして音がする方向を見たら、壁際に薄汚れた事務机があり、その上に私の手提げバッグが置いてある事に気付いた。という事は……あ、そうか、私の携帯のバイブだ!

きっと剛史さんからの着信だわ。


そう気付いて立ち上がったのだけど、アキラ君の動きの方が一瞬早く、私のバッグはアキラ君の手に……

そして彼は無造作にバッグの中身を机の上にばら撒き、私のピンクの携帯を掴んだ。着信を告げるバイブは、まだ鳴り続けている。


「コウジのバカ! 携帯はすぐに取り上げて電源を切れって言ったよね? そうしないとGPSで場所がバレるからって。こうなったらもう、のんびりしてる時間はないよ!」


そう言うやいなや、アキラ君は私の携帯を床に叩きつけるように投げると、更に足でガンガン踏みつけた。


「ちょっと! 人の携帯に何て事するのよ!?」


今更だけどそう抗議をしたら……


「うるせえ! てめえのせいでクソガキに文句言われたじゃねえか!」


逆にすごい剣幕で怒鳴られてしまった。