私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~

剛史さんが、お腹を刺された……?

私は一瞬で顔から血の気が引いて行くのを感じた。


「だ、誰に……?」

「外部から進入した何者かだそうよ」


きっと玉田さんだ。正確には玉田さんの別の人格の誰かに違いないわ。ターゲットは私のはずなのに、どうして剛史さんを……


「イサムさんから病院を聞いたけど、あなた、行ける? 顔が真っ青よ?」

「い、行くわ。行くに決まってるでしょ?」

「じゃあ、はい、これ」


真由美は病院の名前を書いたメモを私にくれた。


「どうやって行けばいいんだろう……」

「タクシーに乗りなさい。イサムさんもそう言ってたから」

「そ、そうね。そうする」


立ち上がって主任を見たら、『早く行きなさい』と手振りで言ってくれた。


私はキャビネットからバッグを取り出し、駆け出そうとしたのだけど、


「真由美?」


気になる事があって、真由美の名を呼んだ。


「なに?」

「イサムさんって誰なの?」

「ああ。フリーのSEよ。すっごい美形なの。実は私、彼と付き合い出したんだけど、それは今度話すね? それより早く行って?」

「うん。行ってくる!」


そうか。この間、真由美が私に言いたい事があるって言ってたのは、きっとその事だったんだ。ちなみにフリーというのは社員ではなく、特定の業務や期間を限定して会社と契約を結んだ個人の事だ。

なんて、今はそれどころじゃないわ。剛史さん、どうか無事でいて! お願い……