私を向いた剛史さんの顔を見上げれば、さっきまでとは違い、憮然としてはいるけどいつもの男らしく彼らしい表情に戻っていた。


「剛史さん……よね？」

「あたりまえだろ？ それよか“ヨシミ”って誰だよ？」

「あ、えっと、昔の友達。思い出したらつい口に出ちゃたみたい」

「ふーん」


私が笑顔を向けても、剛史さんは憮然とした顔のまま。まだ剛史さんの機嫌は直っていないらしい。ヨシミちゃんは説得出来たけど、こっちの人格には反映されないらしい。違う人格だからね。


「ねえ。私、大輔さんを見てため息ついてたんじゃないのよ？」

「な、なんだよ、いきなりそんな話して……」

「だって、剛史さんが誤解してるみたいだから……」

「そんなの、俺は全然気にしてねえよ」


もう、剛史さんたら意地っぱりなんだから……。きっとそうやって気持ちを抑え込むから、ヨシミちゃんという別の人格が出て来ちゃうんだわ。