「そう。加奈子さんと大輔さんがとってもお似合いでラブラブだから、素敵だなと思って、ついため息をついてたの。私も剛史さんとそんな恋をしたいな、って……」

「ほんとに?」

「本当よ?」


ヨシミちゃんは私の真意を探るかのようにジッと私を見つめ、私も真っ直ぐに“彼女”の目を見た。すると、“彼女”の表情がふっと和らぐのがわかった。


「わかった。一応信じてあげる。でも、もしお兄ちゃんを裏切ったら許さないからね!」

「わかったわ。そんな事は絶対にないけどね」

「じゃ、あたし帰る」

「おやすみなさい」


ヨシミちゃんはクルッと私に背を向け、玄関に向かって歩いて行った。私はヨシミちゃんの誤解が解けたようでホッとしながら“彼女”の背中を見ていたのだけど……

帰るって、どこへ? っていうか私、独りになっちゃうわけ?


私はヨシミちゃんに駆け寄り、靴に足を入れようとしていた“彼女”の広い背中にすがり付いた。


「待って、ヨシミちゃん。行かないで!」


するとヨシミちゃんは私を振り向き、言った。


「誰だよ? “ヨシミ”って……」


と。