それを聞いて漸く、
刹那の他にも人が居る事に気付く。
暗くて はっきりとは見えないが、
恐らく初日に紹介された
日里と言う少女と、
団長の息子の瞬だと見当を付ける。
「そう言わずに。
あたしは あんたの事
心配してるのよ?」
「それは大事な情報源だからだろう?」
俺の指摘に刹那は肩を竦めるだけだ。
その仕草から図星なのだと解る。
「……お前と取引が したい。」
昨日の刹那との会話の後
考えていた事を切り出すと、
刹那は軽く眉を上げた。
「取引?
囚人の分際で?」
「お前にとって……
いや、この刑務所にとって、
悪い話では無いと思う。」
話を聞いて貰えなければ、
意味が無い。
俺は慎重に言葉を選びながら
喰い下がった。
刹那は俺の瞳を真っ直ぐに見返し、
小さく頷いた。
「聞くだけよ。
話してみて。」
「……お前達が知りたい事を、
俺は出来る限り話す。
だから……終わったら、
俺を殺してくれないか?」
俺の提案に、
刹那は口を ぽかんと開けた。


