所長室の扉の前には、
常に男が2人 立っている。
警察なのか何なのか知らないが、
所長を守るのが仕事のようだ。
彼等は俺の首に付いている
首輪の番号を確かめ、
俺本人だと確認した後、
所長室の扉をノックし、開いた。
「失礼します。」
中に入ると、
俺達の部屋の5倍は在りそうな
綺麗な部屋が視界に広がる。
白い天井、
白い壁、
床には赤いカーペット。
その部屋の真ん中には大きな机が在り、
沢山の書類と電話が置かれている。
黒い椅子に腰掛け、
その机に肘を付いている男こそ、
この管理所の所長だ。
歳は50歳くらい。
少し白髪が混じって薄くなった黒い髪、
茶色の瞳。
ビールを好んでいるのか、
腹だけが でっぷりと飛び出している。
一見 何処にでも居る中年男に見えるが、
その瞳の奥に狡賢い光を隠している事を
俺は知っている。


