その瞬間。
乾いた音と共に、
痛みと衝撃が、左の頬を襲い、
気が付くと俺は
右側を向いて固まっていた。
振り上げられたまま止まっている
刹那の右腕。
頬を張られたのだと気付いた。
「最っ低!!」
刹那は そう叫ぶと、
格子に鍵を掛けるのも もどかしく、
独房を飛び出して行った。
残された俺は、
じんじんと痛む頬を擦る事も出来ず、
床の一点を見つめていた。
拷問された傷よりも、
張られた頬よりも。
胸が、心が。
痛くて痛くて、堪らない。
諦めていた筈だった。
いつでも死ねると思っていた。
けれど、そんな俺は もう
何処にも居なくて。
刹那によって気付かされた、
自分の本当の気持ちに
愕然と した。
俺は まだ、諦めていない。
自由を渇望している。


