すると刹那は、何故か
少し寂しそうな光を目に宿した。
「それじゃあ、
キスくらいなら良いでしょ?」
そう言いながら刹那が
俺の背中に腕を回した時。
耐えがたい激痛が、躰を貫いた。
「うっ……!」
最果ての刑務所に連れて来られる時、
団長の剣が貫いた傷だ。
吐瀉物も排泄物も そのまま、
風呂にも入れない劣悪な環境で、
膿んでいる事は解っていたが、
敢えて気付かれないように
していたものだ。
ひょっとしたら、この傷が原因で
死ねるのではないかと
思っていたから。
自ら命を絶つ前に。
「え、御免、傷に触れた?」
慌てて離れた刹那に、少し驚く。
きっと団長が気付いたら
此処ぞとばかりに
嬲られただろうから。
「……何でも、無い……。」
必死に誤魔化す。
ばれる訳には行かないからだ。


