初めて人を殺した時の事を、
俺は鮮明に覚えている。



顔に飛んだ生温かい返り血。
耳に入った呻き声。
汗で湿った剣の柄。



目の前の人間の瞳が驚きから苦痛へ、
そして絶望へと変わって行くのを見て。



俺は悲鳴を上げて、その場で吐いた。



人の所為に する事は、簡単だった。



スパイに なったのは、
大切な人を守る為だったから。



人を殺したのは、
上に命令されたから。



言い訳なんて、幾らでも出来た。



心が楽に なる気がした。



その結果、躊躇い無く
人を殺せるように なった。



苦しくも、哀しくも無くなった。



けれど。



この胸に潜む この感覚は、
何なのだろう。



幼い頃 夢見た未来は。










こんな どす黒いものじゃ、
なかった――。