その言葉を聞いた瞬の父親が、
スパイの無防備な躰に暴力を振るう。
「……がっ……あぐ……っ。」
最初こそ悲鳴を漏らしていた彼は、
やがて気絶してしまった。
それでも暴力を振るい続ける
瞬の父親を、父さんが止める。
「……行くぞ。」
父さんの言葉に、皆が歩き出す。
日里の後ろに続きながら、
あたしは ちらりと後ろを振り返った。
両手を上に上げられたまま、
ぐったりと しているスパイ。
この時の あたしは、
唯 彼に同情しただけだった。
歳が近い所為かも知れない。
特別な意味なんて無かった。
彼が――テューロが。
あたしにとって
どうゆう存在に なるのか。
あたしは まだ、知らなかったから。


