Loneliness




「君の名は?」



父さんの言葉にスパイが逡巡する。
彼は歳の割に頭も回るし、
疑り深い性格のようだ。
懐柔される事を恐れたみたい。



その時。



「……ぐっ!」



瞬の父親の蹴りが、
スパイの腹に入った。
吐かないように唇を噛み締めた
彼の こめかみを、瞬の父親は殴る。



「げほっ!!」



我慢 出来ずにスパイは吐いてしまった。
暫く何も口に していなかったのか、
彼の口から出たのは
黄色い胃液だけだったけれど、
それはスパイの服の胸元を汚した。



父さんは吐物が掛からないように
一足先に退いたようだ。



瞬の父親はスパイの前髪を引っ掴み、
顔を上へ上げさせた。
やっぱり瞬が殺されそうに なった事を
怒ってるみたい。



「身を弁えろ。
貴様は唯の囚人だ。
拒否する事は許されない。」



スパイは苦痛に顔を歪めながらも、
歯を食い縛って頷いた。
それを見た瞬の父親が手を離す。
彼の頭は だらりと下に垂れた。



「もう1度 問おう。
君の名は?」



父さんの言葉に、スパイは目を瞑る。



覚悟を決めたようだった。