スパイの直ぐ目の前で、
父さんは立ち止まった。
父さんの考えが解らなくて、
あたしと日里、瞬は目を合わせた。
手の自由を奪われているとは言え、
スパイは足で
父さんに攻撃する事が出来る。
幾ら騎士団の団長が後ろに居るとは言え、
安全とは言えない。
スパイも浅く息を しつつ、
父さん達の様子を窺っている。
暫く じっとスパイを見つめて、
父さんは微笑んだ。
「……成程な、良い判断だ。」
父さんの言葉に漸く納得する。
もし今スパイが父さんを攻撃していたら、
その時点で瞬の父親が
殺す事に なっていたのだろう。
感情に身を任せて命を捨てるような、
馬鹿な奴じゃないか、試したんだ。
「さて、君は その猿轡を取ったら
自殺する気で居るのかな?」
そう聞いた父さんを じっと見つめ、
スパイは ゆっくりと首を横に振った。
それを見た父さんが頷くと、
瞬の父親がスパイに歩み寄り、
猿轡を外した。
スパイは小さく咳き込んだ。
「それでは、質問に答えて貰おうか。
勿論、君が
誠意を持って答えてくれるのなら、
私達も誠意を持って
君の質問に答えよう。」
父さんの その言葉に、
スパイは再び眉を顰めた。


