「聞いた事が在る。
お前さんが、“蒼のテューロ”か。」
「蒼のテューロって、あの……?」
その2つ名には、
フェイルも聞き覚えが在ったようだ。
「確か6歳で編入して、
最短記録で卒業した、あの――。」
「頼むから そんな風に言わないでくれ。」
気が付くと、そう呟いていた。
俺の言葉に、2人は黙り込む。
そう、俺は“特例”だ。
通常、スパイに なれるのは、
スパイの子供だけだ。
彼等は10歳に なると育成所に入学し、
卒業後は祖国の為に尽くす。
歳頃に なると所長が決めた女と結婚し
子を育て、
やがて その子もスパイの道を歩む。
しかし、例外が在る。
ある一定の条件を満たすと、
親がスパイでなくとも
育成所に編入 出来る。
その人間は特例と呼ばれ、
彼等が編入するのに年齢は関係無い。
俺は、そうしてスパイに なった
人間だ。


