団長に髪を掴まれ、投げ飛ばされる。
のろのろと顔を上げると、
鉄の扉が見えた。
頑丈な、重そうな、白い扉だ。
俺の背後に立っている所長が、
口を開く。
「お前には、この扉の向こうで、
毒に犯されながら死んで貰う。」
「……ど、く……?」
一瞬、何を言われているのか
解らなかった。
肩越しに後ろを振り返ると、
所長は楽しそうな笑みを浮かべていた。
「王国で開発されたばかりの、
新しい猛毒だ。
これで お前が悶え苦しみながら死んだら、
この毒は正式に登録され、
帝国との戦争に使われるだろう。」
「…………っ。」
息を飲む事しか、出来なかった。
王国は、敵国である俺の母国へ、
人を殺せる程の猛毒を、
ばら蒔こうとしている。
そう理解した瞬間、
さぁっと全身から血の気が引いた。
戦争とは、そう言う物だ。
剣で、銃で、大量の兵士が殺されて行く。
俺も、沢山の命を奪って来た。
けれど、帝国に毒を撒くと言う事は、
何の罪も無い、
細々と町で暮らしている老人や、
子供を殺すと言う事だ。
解っている。
大勢の人々の命を奪って来た俺に、
所長の行いは悪だと正す権利は無い。
けれど、それでも。
どうして、そんな楽しそうな顔で、
そんな事を言えるんだ……。


