【Talk:刹那】



父さんに呼ばれ、
テューロの処刑の日が決まったと
言われたのは、
彼から帝国の情報を手に入れた日から
丁度1週間後の事だった。



その話を聞いてから
自室へ戻る迄の記憶は曖昧で、
気が付いたらベッドに仰向けに なり、
ぼんやりとしていた。



テューロが、殺される。



何故だろう。
他の囚人が処刑される時は、
何も思わなかったのに、
どうして彼だけは――。



「……哀しいの?」



唐突に掛かった声に驚き、
上半身を起こす。
部屋の戸は いつの間にか開いていて、
直ぐ横の壁に凭れ掛かるように
日里が立っていた。



「……かな、し……い……?」



一瞬 意味が解らず固まると、
日里は その綺麗な唇を、きゅっと結んだ。



「刹那、良い加減 決めなよ。」


「……何を?」


「しらばっくれないで。
ほんとは解ってるでしょ?」



いつもの明るい口調とは
打って変わった鋭い指摘。



じっと瞳を見つめれば、
普段は見えない強い意志が窺えた。



「私、言ったでしょ?
刹那が決めた事なら応援するって。」



ほんとは、日里が何を言っているのか、
解ってる。



今の生活とテューロ。
どっちが大事か訊いてるんだ。



もしもテューロのが大事なら、
彼を連れて逃げるべきだと。
その為なら自分は協力すると。



そう、言ってるんだ。