【Talk:刹那】
「ねー刹那ぁ。
今日は あのスパイの所 行かないの?」
椅子に座って ぼーっとしていると、
日里が のほほんと訊いて来た。
「……うん。」
短く答えると、
日里は ふぅんと言って、
あたしのベッドに寝転んだ。
「あのテューロって子、
幾つなんだろ?」
「日里より歳下じゃない?」
「えー、やっぱり?」
軽口を叩く間にも、あたしの頭は
目まぐるしく回転する。
昨日から、
何を してても落ち着かない。
ずっと頭に浮かんでいるのは、
テューロの、透明な涙。
穢れた あたしは、
あんな綺麗な涙を流せるだろうか。
彼が泣く姿を見ていると、
胸が痛くて痛くて堪らない。
お願い、泣き止んでって、
肩を抱きたくなる。


