「選べる選択肢が……?」
「死ぬか、
自分を犠牲にして大切な人を護るか。
選べるようで、選べない場所に、
立たされた事が在るのか?」
「自分が悲劇のヒロイン、って
言いたいの?」
日里の言葉に、
テューロは目を逸らした。
「そう、かもな。」
「何それ、意味 解んない。」
素直な日里の言葉に、瞬が苦笑する。
「……俺は……なりたくて
スパイに なったんじゃない。」
テューロの言葉に、
日里は黙り込んだ。
「俺は……売られたんだ。
そうしてスパイに なって、
沢山の命を奪って、
上の命令で王国に来て、
何故か生かされて、
尊厳もプライドも殺されて、
奴隷の印を刻まれた。」
不意にテューロは、
手首に付いた枷の鎖を、
がしゃんと鳴らした。
「この枷と一緒だ。
いつも いつも縛られて、
自由を奪われて。
必ず誰かの所有物として
生きる事しか許されないっ!」


