「きゃあっ!!」
為す術無く躰が吹っ飛ばされて、
がしゃんと音を立てて
鉄格子に ぶつかった。
「刹那、大丈夫!?」
朦朧とする意識の中、
日里の声が聞こえた。
「だ、大丈夫……。」
一応 護身術くらいは
身に付けているから、
受け身は何とか取れたし、
直ぐに意識も はっきりした。
ゆっくりと立ち上がると、
あたしを蹴り飛ばした事で
我に返ったのか、
テューロは愕然とした顔で
此方を見ていた。
「せ……つ、な……。」
初めて名前を呼ばれた。
そう気付いた時、
何故か無性に嬉しくなった。
でも今は喜んでいる場合じゃない。
自分が何を したのか解らない。
そんな顔を して
戸惑っているテューロは、
直ぐに消えてしまいそうなくらい、
儚く見えたから。


