目を細めてクスクス笑っている凍雨君に、門川君が話しかける。
「一族の移動は、もう完全に済んだのかな?」
「はい! みんな戻ってこられて本当に喜んでいます!」
「長く不遇の時を過ごしたでのぅ。喜びも、ひとしおじゃろうて」
一族の移動? 不遇の時? なにそれ?
疑問な表情のあたしに、絹糸が説明してくれた。
「氷血の一族は、草も生えぬような極寒の地に長年閉じ込められていたのじゃよ」
「え!? なにそれなんで!?」
閉じ込められるって、なに!?
・・・あ、そういえば、今まで一度も会った事ないよね?
氷血の一族の人に。だれひとり。
「分かるじゃろう? 華子の差し金じゃよ」
あ・・・そっか。なるほど。
奥方の、門川君のお母さんに対する憎しみたるや、もう尋常じゃなかった。
淡雪(あわゆき)憎し。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの典型例みたいな人だった。
お母さんは氷血の一族の人だったから。
憎しみの矛先が、一族全てにまで及んだんだ。
「氷血の一族でなければ、一日と生きてはおられぬ過酷な地じゃ」
「雪と、風と、氷。それ以外には何ひとつ無い土地でした」
「そんな・・・どうやって生き延びたの?」
「月に一度だけ、門川から運ばれる僅かな食料が命綱でした」
「・・・すまない・・・」
門川君が辛そうな声で謝罪した。
「僕の力ではどうにもできなかった。母上の一族が、そんなに辛い目にあっていたというのに」
門川君の目が悲しそうな色に染まる。
心底申し訳なく思っているんだろう。
「一族の移動は、もう完全に済んだのかな?」
「はい! みんな戻ってこられて本当に喜んでいます!」
「長く不遇の時を過ごしたでのぅ。喜びも、ひとしおじゃろうて」
一族の移動? 不遇の時? なにそれ?
疑問な表情のあたしに、絹糸が説明してくれた。
「氷血の一族は、草も生えぬような極寒の地に長年閉じ込められていたのじゃよ」
「え!? なにそれなんで!?」
閉じ込められるって、なに!?
・・・あ、そういえば、今まで一度も会った事ないよね?
氷血の一族の人に。だれひとり。
「分かるじゃろう? 華子の差し金じゃよ」
あ・・・そっか。なるほど。
奥方の、門川君のお母さんに対する憎しみたるや、もう尋常じゃなかった。
淡雪(あわゆき)憎し。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの典型例みたいな人だった。
お母さんは氷血の一族の人だったから。
憎しみの矛先が、一族全てにまで及んだんだ。
「氷血の一族でなければ、一日と生きてはおられぬ過酷な地じゃ」
「雪と、風と、氷。それ以外には何ひとつ無い土地でした」
「そんな・・・どうやって生き延びたの?」
「月に一度だけ、門川から運ばれる僅かな食料が命綱でした」
「・・・すまない・・・」
門川君が辛そうな声で謝罪した。
「僕の力ではどうにもできなかった。母上の一族が、そんなに辛い目にあっていたというのに」
門川君の目が悲しそうな色に染まる。
心底申し訳なく思っているんだろう。


