神様修行はじめます! 其の三

空に消えた亀の行方を目で追っていると、門川君がガサガサと手紙を広げた。


手紙には至急の印が刻印してある。


内容を目で追っていた彼の表情が難しくなった。


・・・どうしたんだろ。何か悪い知らせ?


「永久、どうした? どこからの手紙じゃ?」


「端境(はざかい)の一族からだ」


「ほう、ようやっと返事が届いたか。して中身は?」


「やはり無理だそうだ」


「ふうむ・・・」


はざかいの一族? 聞いた事ない。


無理って、なにが? いったい何の話??


「門川君、絹糸、なにかあったの? 端境の一族って?」


「端境とは、結界を司る一族じゃよ」


「その当主に、大事な書類を持ってきてもらうよう頼んでいたんだが・・・」


「大事な書類? それはひょっとして『承認の書』の事ですの?」


お岩さんが会話に入ってくる。


門川君が難しい顔のままで頷いた。


お岩さんとセバスチャンさんが顔を見合わせる。


・・・なに? どしたのよいったい?


なんかみんな、それなりに話が通じてるみたいだけれど。


あたしはぜーんぜん話が見えない。説明してよ。分かるようにちゃんと。


「『就任の儀』というものがあるんだよ」


「新当主のお披露目会のようなものじゃな」


「かなり盛大なお披露目で、正式で公式なものですのよ」


あぁ、うんうん分かる。


お岩さんの時も盛大にやったよね、それ。あたし出席したもん。


・・・・・・あれ?


「門川君って、まだそれ・・・」


「ああ。まだ僕の就任の儀が行われていないんだ」