神様修行はじめます! 其の三

「きゃあぁぁ!?」

勢いにあおられて、あたしは正座したまま後ろに引っくり返りそうになった。


巨大な物体が畳の上をザザァッと滑って、ビタッと停止する。


なになになに―――!?

いったい何が起こっ・・・!?


あ・・・・・・。


あたしはその物体の正体を指差しながら、大声で叫ぶ。


「こら伝書亀! いい加減にしなさい!」


門川で書簡を運ぶ役割を担う、全長2メートルにもなる巨大亀がいた。


ウサギよりも早く飛行し、鳥よりも高い攻撃力で大切な書簡を守る。らしい。


・・・そもそも、ウサギよりも速く飛行ってとこからして意味が良く分からない。


亀もウサギもまずは飛ぶこと前提ってのが理解不能。


高い攻撃力って、なによそれ。


亀が何をどーやって、どれを攻撃すんのよ?


そんなことより毎回毎回、猛スピードで部屋の中に突っ込んできて!


手紙が届くたびに寿命が縮むんですけど!


おまけに畳は傷むし、もっと静かに入って来いって何度も言ってるでしょ!?


伝書亀は、一転して緩慢な動作になった。


のーっさりもーったり、口に咥えた手紙を門川君に渡すために畳を移動する。


ああぁぁ~、イライラするうぅぅ。


そこでこそ、お前の自慢のスピードを発揮する時だろうがっ。


門川君は平静な表情で亀の移動を見守っている。


そして、やっとの事で手紙を受け取り、亀に労いの言葉をかけた。

「ご苦労だった」


その途端・・・


― ズバアァァァ―――ッ!! ―


亀は目にも止まらぬスピードで部屋を飛び出し、飛び去っていく。


空の彼方に、キラン、と亀は星になった・・・。