神様修行はじめます! 其の三

門川君の私室は、歴代当主の由緒ある個室へ移った。


由緒はあるけど、あたしのじー様が昔、半壊させちゃった例の部屋。


だいぶ引っ込んだ場所にあって、訪ねるのが面倒になったけど仕方ない。


なんたって当主様だもん。それ相応の待遇ってやつだよね。


到着した私室の前に皆で並んだ。

「永久よ、入るぞ」

「あぁ、どうぞ」


彼の声が聞こえて、あたしの胸が軽く躍った。


セバスチャンさんが襖を開けてくれた。


まだ黄色くなっていない、新鮮な薄緑色の畳の色が目に飛び込む。


独特な香りが漂った。

そして・・・


「やあ、おそろいだな」


背筋の伸びた綺麗な姿勢で正座をしている部屋の主が、こちらを見た。


綺麗に彫り込まれた、切れ長の涼しげな二重。


優美なラインを描く眉。


引き締まった形の良い唇。


すっと流れるような鼻梁。


ああ・・・相変わらずの美貌!


あたしの胸はギュウッと締め付けられ、同時に華やぐ。

門川君・・・!!


「永久様! お久しぶりですわ!」


「当主様、ご無沙汰をいたしております」


「岩さん、久しぶりだね。セバスチャン、その当主様、というのはやめてくれ」


深く頭を下げるセバスチャンさんに対して、門川君は軽く笑った。


そしてそのままあたしに視線を移して・・・


「天内君、おかえり」


そう言ってくれた。