神様修行はじめます! 其の三

「永久様ー! 天内さーん!」

「は、はあぁぁーーいぃ!!」

―― ぐきっ。

反射的に、門川君の顔を捻ってしまった。

彼の首が、ちょっと変な方向に曲がる。


あああぁぁ!

ま、また、せっかくのチャンスが!

神様! これって罪を犯した者への罰ですか!?


「な、なにかなぁ凍雨君? 帰ったんじゃなかったのぉ?」


ヒクヒク頬を引き攣らせるあたしに、凍雨君は喜色満面で駆け寄ってきた。


「見てくださいこれ!」
差し出された、彼の手の平には・・・


「・・・あぁ、これ、ふきのとうだね」


春の訪れを告げる小さな蕾。

薄い緑の葉と、白い花がとても可憐な、ふきのとうが乗っていた。

門川くんも鼻血を拭きながら覗き込んで、微笑む。


「本当にもう、春がそこまで来ているんだな」


凍雨君はもう大はしゃぎ。

文字通り飛び上がって喜んでいる。


「ぼく、初めて見ました! ふきのとう!」


その素直な喜びように、こっちの顔もほころんだ。

そっか。そうだろうね。

氷血の一族は、ずっと氷の世界に閉じ込められていたから、こんな植物には縁が無かったんだろう。

彼らには、春を告げる花なんて目にする事はできなかった。


「まさか、この目で見られる日が来るなんて!」


ふきのとうを大切に手の中に包み込む彼は、満面の笑顔だった。


「夢にも・・・夢にも思わなかった!」


春を告げる花。

長い長い雪と、氷の時代の終わりを告げる花。

待ち焦がれた・・・花。