神様修行はじめます! 其の三

むくり。と、あたしに押さえ付けられていた彼の頭が起き上がった。

ビクッとあたしは硬直する。


ど、どうしよう。

彼と顔を合わせたくない。

彼の目が見られない。

・・・も一回、縁側に押し付けちゃおうか?


鼻を覆う彼の指の合間から、赤い液体が覗いている。

あ、また鼻血が流れてる。

今回、良く鼻血出るなぁ門川君。


「あ、あの、門川君、大丈夫・・・?」

「どうやら不発に終わったようだ」

「・・・はい?」

「いや、こういった不発のケースは、間々ある事だとセバスチャンから聞いていた」


・・・・・

いや、ここまでひどいケースは、あんまり無いと思う。

自分で言うのもなんですが。


「タイミングと、キレが重要なのだそうだ。技術を要する作法だとセバスチャンから聞いた」

「はあ、そーゆーもんなんですか」

「初心者だから仕方ないが、僕はまだ未熟者だということだな」

「はあ」

「精進して、これから技を磨かねばならない」

「・・・・・・」

「腕前が上達するまで、天内君との本番は無しだ」

「ちょっとなにそれどーゆーことよ!!」


あたしとの本番までに技を磨くって・・・

いったい誰と磨くつもりなのよ!

てか、そもそもこれがキスだって認識もしてなかっただろ、あんた!

冗談じゃないわ!


「一回ミスしたくらいで諦めるつもりなの!? 根性なし!」

「しかし技術が・・・」

「んなもん、ノリと勢いでカバーすりゃいいでしょ!?」


あたしは彼の頬を両手でガッチリ挟みこんだ。

引いてダメなら押しまくる!

今は千載一遇のチャンスなんだ!

ここでみすみす、引きさがるわけには・・・!