神様修行はじめます! 其の三

「運の分量は公平でなくても、罪を犯す機会なら誰にでもあるからな」

「誰でも罪を犯す可能性があるって事だよね」


千年前に、たまきさんが陥った不運な状況。

それって、こっちの世界で戦う人なら、誰にでも可能性がある。


「次は、あたしかもしれない」
「僕かもしれない」


もし・・・
もし、そうなってしまったら?

あたしは罪を犯し、周りの全てを傷付けて。

苦しみは拡散し、やがて大きな恨みや悲劇を生み出す。

それは、決して無くなる事はないんだろう。

人が生きるこの世界では。

永遠に繰り返す。・・・繰り返すんだ。


あたし達は、景色を眺める。

すっぽりと庭を覆っていた雪もだいぶ溶けて、所々に土が見えている。

ほんのわずかに緑も見えて、冬の名残りと、春の足音が混じり合う。

不幸な罪の芽が、あちらこちらで顔を出すこの世界で。


「だが必要以上に恐れることは無いさ」


門川君が、庭を見ながらそう言った。


「僕たちは、それでも救いと癒しがある事を知っている」

「うん。そだね」


不幸な罪が起きたとしても、そこが終点じゃない。

諦めなければ、その先に道は続くんだ。


「塔子さんとマロだって、この先ふたりで道を歩いていくんだもんね」

「・・・・・・」

「どしたの? 門川君」


門川君は、何やら真剣に考え込んでいる様子だ。


「あのふたり、とても幸せそうだったな」

「そりゃそうだよ。なんたって結婚間近なんだから」

「結婚か・・・」


彼は眉間にシワを寄せ、さらに深く考え込んでしまった。