神様修行はじめます! 其の三

「塔子さん、凍雨さん、よろしかったら馬車でお送りいたしますわよ?」

「わ、やった! あの牛車にまた乗りたかったんです!」

「牛車じゃなくて馬車!ですわ」

「あ、塔子さん、ぼくにもそのイモようかん少し分けてくださーい」

「聞いてますのっ? とても重要なことですのよっ?」


皆が縁側から庭に降り立って、絹糸としま子も、見送りのために立ち上がった。


「それでは永久様、アマンダ、また明日」

「お疲れ様でした!」

「永久様、天内のお嬢様、これにて失礼いたします」

「うん、みんなまた明日~! じゃあね!」


それぞれ笑顔で挨拶を交わし、揃って歩き出す。

和やかに交わされる会話が、みんなの背中と共に、庭から遠ざかっていった。

あたしは手を振り、それを見送る。

そして、誰もいなくなった庭先で、まだ冬の名残りの濃い風の冷たさを意識した。


ふと気がつくと、門川君が隣に立っていて、穏やかな表情であたしを見つめている。

あたしたちは、申し合わせたように縁側に並んで腰掛けた。


「春はだいぶ近いけど、まだ寒いねー」

「だが熊たちは、敷地内からもう姿を消したようだ」

「そっか。また来年だね」

「ああ」


また来年。また明日。
そう言える今を、とても嬉しく、ありがたく思う。

たくさん辛い事があって、みんながみんな大変な思いをして。

それでもこうして笑ってる。


「ねぇ門川君、世の中ってさぁ、不公平だよね」

「どうしたんだ? 急に」

「うん。門川君やたまきさんや皆を見ていると、つくづくそう思うんだ」


運も、不運も、ちっとも平等じゃない。

人より余分に苦労しなきゃならない人って、やっぱりいると思う。

たくさん苦労する人は、どうしても罪を犯しやすいだろうし。

なら罪もまた、不平等ってことだよね。