「塔子さん、凍雨さん、よろしかったら馬車でお送りいたしますわよ?」
「わ、やった! あの牛車にまた乗りたかったんです!」
「牛車じゃなくて馬車!ですわ」
「あ、塔子さん、ぼくにもそのイモようかん少し分けてくださーい」
「聞いてますのっ? とても重要なことですのよっ?」
皆が縁側から庭に降り立って、絹糸としま子も、見送りのために立ち上がった。
「それでは永久様、アマンダ、また明日」
「お疲れ様でした!」
「永久様、天内のお嬢様、これにて失礼いたします」
「うん、みんなまた明日~! じゃあね!」
それぞれ笑顔で挨拶を交わし、揃って歩き出す。
和やかに交わされる会話が、みんなの背中と共に、庭から遠ざかっていった。
あたしは手を振り、それを見送る。
そして、誰もいなくなった庭先で、まだ冬の名残りの濃い風の冷たさを意識した。
ふと気がつくと、門川君が隣に立っていて、穏やかな表情であたしを見つめている。
あたしたちは、申し合わせたように縁側に並んで腰掛けた。
「春はだいぶ近いけど、まだ寒いねー」
「だが熊たちは、敷地内からもう姿を消したようだ」
「そっか。また来年だね」
「ああ」
また来年。また明日。
そう言える今を、とても嬉しく、ありがたく思う。
たくさん辛い事があって、みんながみんな大変な思いをして。
それでもこうして笑ってる。
「ねぇ門川君、世の中ってさぁ、不公平だよね」
「どうしたんだ? 急に」
「うん。門川君やたまきさんや皆を見ていると、つくづくそう思うんだ」
運も、不運も、ちっとも平等じゃない。
人より余分に苦労しなきゃならない人って、やっぱりいると思う。
たくさん苦労する人は、どうしても罪を犯しやすいだろうし。
なら罪もまた、不平等ってことだよね。
「わ、やった! あの牛車にまた乗りたかったんです!」
「牛車じゃなくて馬車!ですわ」
「あ、塔子さん、ぼくにもそのイモようかん少し分けてくださーい」
「聞いてますのっ? とても重要なことですのよっ?」
皆が縁側から庭に降り立って、絹糸としま子も、見送りのために立ち上がった。
「それでは永久様、アマンダ、また明日」
「お疲れ様でした!」
「永久様、天内のお嬢様、これにて失礼いたします」
「うん、みんなまた明日~! じゃあね!」
それぞれ笑顔で挨拶を交わし、揃って歩き出す。
和やかに交わされる会話が、みんなの背中と共に、庭から遠ざかっていった。
あたしは手を振り、それを見送る。
そして、誰もいなくなった庭先で、まだ冬の名残りの濃い風の冷たさを意識した。
ふと気がつくと、門川君が隣に立っていて、穏やかな表情であたしを見つめている。
あたしたちは、申し合わせたように縁側に並んで腰掛けた。
「春はだいぶ近いけど、まだ寒いねー」
「だが熊たちは、敷地内からもう姿を消したようだ」
「そっか。また来年だね」
「ああ」
また来年。また明日。
そう言える今を、とても嬉しく、ありがたく思う。
たくさん辛い事があって、みんながみんな大変な思いをして。
それでもこうして笑ってる。
「ねぇ門川君、世の中ってさぁ、不公平だよね」
「どうしたんだ? 急に」
「うん。門川君やたまきさんや皆を見ていると、つくづくそう思うんだ」
運も、不運も、ちっとも平等じゃない。
人より余分に苦労しなきゃならない人って、やっぱりいると思う。
たくさん苦労する人は、どうしても罪を犯しやすいだろうし。
なら罪もまた、不平等ってことだよね。


