神様修行はじめます! 其の三

「塔子殿、今日も輝くばかりに美しい!」

「まあ嫌だわ、典雅ったら。およしなさいな人前で」

「この世で一番素晴らしい女性を、妻に娶ることが叶う。あぁ、マロこそが世界一の果報者におじゃる!」

「んもう! 典雅ったら困ったものねえ! ほーっほっほっほっ・・・!」


塔子さんが口元に手を当てて、上機嫌で高笑いする。

それをウットリと見つめるマロ。

・・・えっと、『割れ鍋に綴じ蓋』って、こーゆーことですかい?


「おなごはのぅ、望まれて嫁ぐのが、幸せというものじゃ」

縁側で丸まってる絹糸が、年寄り丸出しな発言をする。

うーん、でもなんかそれ、分かる気がする。

当初の予想に反して、うまくいっちゃいそうな気がするよ、このふたり。


端境一族も、この縁談は狂喜乱舞だ。

なんったって、有名一族のお嬢様が、自分の当主の嫁に来るんだもんね。

夢にも思わない、まるで奇跡みたいなもんだ。

婚礼の日を一族上げて、指折り数えて待っている。


端境も、怒涛も、塔子さんもマロも、すごく幸せ一杯な空気に包まれている。

それが見ていて、とても心地良かった。

あんな事があった後だし、余計に救われる気がする。


「塔子殿、ささ、式の打ち合わせに参りましょう」

「ええ。私の荷物持ってくれる?」

「もちろんでおじゃる~」


立ち上がった塔子さんを見て、お岩さんがセバスチャンさんに話しかけた。


「セバスチャン、まだ仕事は終わりませんの?」

「さようでございますね。永久様、本日はそろそろ切り上げましょうか」

「そうだな。今日は良く仕事が片付いた」

「賛成です。ぼくもさすがに少し疲れちゃいました」


あ、みんなお仕事終了? 帰っちゃうの?