神様修行はじめます! 其の三

・・・・・・。

いや、あたしだって最初にこの話を聞いた時は、本気で驚いたさ。

『無理無理! 絶対むり! うまくいきっこないって!』

って、思わず全否定しちゃったよ。失礼ながら。


なんでも、マロの方が塔子さんに一目惚れしたらしく。

あれ以来、実に勇猛果敢にアタックしたらしい。

塔子さんは、最初のうちは鼻も引っ掛けなかったらしいんだけどね。


雪の日も、吹雪の日も、猛吹雪の日も。

マロは健気に連日連夜、怒涛の一族の屋敷に通い詰めて、門の前でひたすら懇願してたらしい。

『塔子殿を、ぜひとも我が妻にぃぃ!』って。


あっちの世界だったら、完全にストーカー行為で書類送検されそうな反則技スレスレ。

でもこの反則技が功を奏した。

塔子さんのお父さんが、

『あの男には根性がある。気に入った!』

って言い出して、あれよという間に結婚話がまとまっちゃった。


努力とか根性とかの言葉、大好きそうだもんなぁ。塔子さんのパパ。

とにかくそういう事で、いま塔子さんは結婚準備に大忙しなんだ。

あ、このイモようかんは、結婚式の引き出物に使うんだって。


「まあねぇ、端境一族は今後も大変だし。ここはひとつ世界のためにあたしが犠牲になって、橋渡しにならなきゃね」


なーんて神妙そうなこと言ってるけど。
塔子さん、顔がニヤけてるよ顔が。

なんだかんだいって、彼女も結構幸せそうなんだこれが。意外にも。


「塔子殿。こちらにおじゃったか」
「あら典雅、来てたの?」


あ、新郎の登場。
庭先から、いそいそとマロが姿を現した。

丁寧な物腰で門川君やあたし達に挨拶してくれるその顔は、信じられないほどデレ~っと締りが無い。