神様修行はじめます! 其の三

たまきさんは、どちらにせよ苦しむ運命だった。

夫を助けたにせよ、見殺しにしたにせよ。

どの道を選んだところで、彼女には満足も幸福もあり得ない。

なのに、選ばなければならないその非業こそが、彼女の救いの無さだった。


でも今、おそらく彼女は救われた。

だからといって、千年の苦悩が帳消しになることは無いけれど。

でも得られる中での、最上の救いを彼女は得た。


命を救った夫からの深い愛。

これ以上の、いや、これ以外の救いも癒しも無い。

選んだ道の先の暗黒に翻弄され続けた人は、やっと・・・やっと闇の先に、たったひとつだけ光を見つけることができた。

千年の、後に。


「あなたは・・・確かに迎えに来てくださった・・・」


たったひとつの。そして、唯一の。


―― サラ・・・


突然、たまきさんの衣装がサラサラと崩れ出した。

まるで砂のように、滑るように崩れて落ちていく。


「た、たまきさん!?」

いや、衣装だけじゃない! 長い黒髪も崩れていく!

まるで彼女の体が乾いた砂で作られているように、どんどん表面から崩れていく!

なんで急にこんな!? このままじゃ彼女が崩壊しちゃう!

とにかく何とかしないと!


「門川君、絹糸! たまきさんを助けなきゃ!」

「・・・・・・」

「門川君! 絹糸!」


慌てふためくあたしと裏腹に、絹糸は静かだった。

彼女が崩れていく様子を、身動きもせずに見守っている。

門川君が絹糸に問いかけた。


「絹糸、こうなる事を知っていたのか?」

「・・・うむ」