神様修行はじめます! 其の三

『たまき、たまき、たまき・・・』

まさに、命果てるまで、夫は呼び続ける。

愛し続けた妻の名を。


『たまき、たま、き・・・』


老いた夫の、皺だらけ顔が涙に濡れた。

いくら呼んでも、返事は返ってこない。

それでも夫は呼び続ける。

固く固く、愛する人と約束したから。


『た、ま・・・ 迎え・・・来・・・』


涙、ひと粒。

夫は誓いを守り続け・・・

その生涯を終えた。


だれにも知られること無く、

ただ、もの言わぬ座り女が、最期のその場に座り続けていた。



・・・・・・。


あたし達は全員、言葉も無くその姿を見ていた。

愛と誓いを貫き通した夫の幻影が、静かに横たわっている姿を。


「あなた・・・」

この場に染み渡る雛型の・・・ううん、たまきさんの声。

彼女は静かに立ち上がり、夫の幻影のそばに歩み寄る。

そして、その場に座って語りかけた。


「あなた、約束どおり迎えに来てくださったのですね」


たまきさんは微笑んでいた。

両目から涙が川のように流れていたけれど、それでも彼女は微笑んでいた。

それは、たまきさんが初めて見せてくれた笑顔だった。


もうこの世には居ない人からの、自分への深い愛の証。

それをまざまざと目にして、切なさと悲しみが、怒涛のように心の中を駆け巡っていることだろう。

そして・・・喜びと感謝も。