神様修行はじめます! 其の三

「僕は門川当主だ。だが微力な僕が、あなたにしてあげられる事は少ない」

門川君は、涙を拭きながら言葉を続ける。

「それでも、今あなたが一番欲しい言葉を捧げようと思う」


雛型は門川君を見つめ、門川君も雛型を見つめ、二人の間に、ほんのわずかな沈黙の時が流れた。


「雛型。君の罪は、許された」

「・・・・・・!!」


雛型の両目が大きく見開かれた。

薄っすらと唇が開き、言葉にならない声が漏れる。

白く細い指が顔を覆い、感極まった彼女は、何度も呻き声を上げた。


「お、お・・・おぉぉ・・・・・」


雛型の中の全てが、今、大きく変わっていく。

門川君は優しく微笑み、その姿を見つめている。


『罪は許された』


それは・・・

その言葉は本来、門川君が雛型に対して言える言葉では無い。

彼にも、この世の誰にも言う権利は無い。

なのにそれを言い切ってしまう事は、逆に罪であるのかもしれない。

それでも、彼は言った。

ただの言葉の形だけなのだとしても、たとえそれが罪でも、承知のうえで雛型に許しを与えた。


雛型にとって、それがわずかでも救いになるように。

彼は彼女を救うために、罪を引き受けたんだ。


「うん。雛型、あなたは許されたよ」


あたしも雛型に微笑み、許しの言葉をはっきりと捧げる。

門川君、その罪を、あたしも一緒に引き受けるよ。

それが雛型の癒しに、救いになるのなら。


雛型は両手で顔を覆い、突っ伏して泣いた。

おぉ、おおぉと嗚咽している。

喜びも悲しみも全てが混然とした、言葉にできない感情全てが、溢れる声だった。