神様修行はじめます! 其の三

「時は過ぎてしまった。罪も、なにもかも、過ぎ去ってしまったんだよ」


愛する人も過ぎ去り。

責める人も過ぎ去った。

罪を犯した事実は消えなくても、それは時の彼方のこと。

今はもう、未来。

あなたには癒され、救われる権利がある。

この世の誰でも、そうであるように。

この未来の世界で、あなたは信じるべきなんだ。


罪在るこの世に、未来も希望もあるのだと。


水が在って

油が在って

梅干しおにぎりが在る。

それも事実であるこの世界を、罪人は信じて生きていくのだと。

あなたは、そうして生きていくんだ。

あたし達と共に、茨の道を。

そして・・・


「そしてあなたは、いつか癒され救われるんだよ。雛型」


雛型の頬を流れる涙があたしの指を濡らし、手の平に伝う。

雛型はあたしを見て、あたしの言葉を聞いている。


生きている。

まごうこと無く、彼女はここに生きている。

だからきっと大丈夫。あなたは癒されるから。

信じて。

マロのように、あなたも信じて。


「信じて。あたし達を。そして未来を」


あたしは、何度も何度も雛型の涙を拭った。

とめどなく流れる涙を、飽くことなく拭き続ける。

指先が頬の柔らかさを感じる。

それは彼女もまた、あたしの存在を感じている証。


門川君があたしの隣に座って、彼もまた雛型の涙を指で拭く。