神様修行はじめます! 其の三

目の前の夫を見殺しにできなかった。

それが、大罪だった。

世界中から憎まれ、責められ、罵られた。

罪を償えと命令され、従い、人をやめて道具と化した。

いつかは許され元通りになると諭され、信じた。

でもそれは・・・偽りだった。

騙され、全てを失い、筆舌に尽くしがたい辛酸をなめた家族は全員、のたれ死んだ。

お腹の中の子どもまで、罪の償いとして利用されて。

あまりの悲しみに我を失った夫は、殺された。

そして千年過ぎて・・・

忘れ去られた。

もう、誰もいない。誰もいないんだ。


それを受け入れろと言われ。

他に道など無いと言われ。

『とても受け入れ切れぬ』と泣く事も・・・

それも罪なのだろうか?

それすらも許されないのだろうか?


・・・・・・。


そう。
それすらも・・・許されないんだ。


雛型は、受け入れなければならない。

それが現実である以上、受け入れる以外に道は無い。

それでも・・・


「もう、誰も責めないから」


あたしは自分の涙を手で拭いて、その手を雛型に伸ばす。

雛型の頬に指先が触れて、ふたりの涙が混じり合う。

千年の刻を越え、あたし達は今、ここに触れ合えた。


「あなたを責められる人は、もうこの世にいない」


それがあなたにとって、救いや癒しになるのかどうか、分からないけれど。

でも、これだけは確かなこと。

あなたにとっては目覚める前の瞬間のことであっても、全ては千年前のできごとなんだ。