「どの道も・・・」
あたしの手が雛型の頬に触れる直前、雛型の唇が動いた。
「どの道も、無いのですか・・・?」
あたしは伸ばした手を引っ込めて、雛型の言葉の続きを待つ。
門川君も絹糸も、黙って雛型の言葉が溢れ出るのを聞いていた。
あふれるものを、あふれるままに。
「どの道も・・・どの道も、無かったのですね・・・」
私は夫を愛していました。
愛する人を助けたかった。
でも、愛する人の命を救う行為は・・・大罪でした。
愛する人に、生きて欲しいと願ったことで、この世に死が溢れ、憎しみが充満した。
私は、夫を見殺しにしなければならなかったのです。
でも、それができなかった。
どうしても、どうしても、どうしてもどうしてもどうしても・・・
どうしても、できなかった。
だから私は罪を選び、その代償に、全てを失いました。
夫を見殺しにさえすれば、失わずに済んだもの。
夫も含めて、みんなみんな失った。
世の人々の命。
人々の穏やかで平穏な心。
端境一族の地位と未来。
父、母。妹。
まだ見ぬ・・・罪無き我が子。
きっと迎えに来ると誓ってくれた、夫。
あたしの手が雛型の頬に触れる直前、雛型の唇が動いた。
「どの道も、無いのですか・・・?」
あたしは伸ばした手を引っ込めて、雛型の言葉の続きを待つ。
門川君も絹糸も、黙って雛型の言葉が溢れ出るのを聞いていた。
あふれるものを、あふれるままに。
「どの道も・・・どの道も、無かったのですね・・・」
私は夫を愛していました。
愛する人を助けたかった。
でも、愛する人の命を救う行為は・・・大罪でした。
愛する人に、生きて欲しいと願ったことで、この世に死が溢れ、憎しみが充満した。
私は、夫を見殺しにしなければならなかったのです。
でも、それができなかった。
どうしても、どうしても、どうしてもどうしてもどうしても・・・
どうしても、できなかった。
だから私は罪を選び、その代償に、全てを失いました。
夫を見殺しにさえすれば、失わずに済んだもの。
夫も含めて、みんなみんな失った。
世の人々の命。
人々の穏やかで平穏な心。
端境一族の地位と未来。
父、母。妹。
まだ見ぬ・・・罪無き我が子。
きっと迎えに来ると誓ってくれた、夫。


