神様修行はじめます! 其の三

暗闇の中で。
背を丸め、ぽつんと。
ただひとり、雛型が座り込んでいた。

その小さな体。その物寂しさ。
えもいわれぬ悲哀さが全身から染み出す様子に、見ているこちらが辛くなる。

長い長い黒髪に覆われ、彼女の表情は伺えない。

でも雛型の頬が、濡れていた。

闇の中で、ほろほろ零れ落ちる涙が、まるで宝石みたいに光っていた。


・・・会う時は、いつも泣いてばかりだね。雛型。

どんなにか悲しいんだろう。
苦しいんだろう。辛いんだろう。

ひとりぼっちで救われないまま、泣き続けるあなた。


「雛型」

あたしはまっすぐ雛型に向かって進み、彼女の真正面に座り込む。

「天内君」
「心配ないよ門川君」

あたしは頭を横に振り、彼の不安を否定した。


大丈夫、雛型は攻撃なんてしてこない。

彼女が望んでいるのはそんな事じゃないんだ。

あたしにはそれが分かるの。


「遅くなってごめんね雛型」

「・・・・・・」

「やっと会いに来れたよ。会いたかった。ずっと」

「・・・・・・」

「あなたに、会いたかった」


―― ほろほろほろ・・・

雛型の頬から、次々と涙がこぼれる。

『会いたかった』

この言葉は・・・
ある意味彼女にとって、胸を締め付けられるほど、残酷な言葉なのかもしれない。


会いたかった。

そう言える相手を

そう言ってくれる相手を

ずっと望んでいた者達を

もはや永遠に失ってしまった彼女には・・・。