神様修行はじめます! 其の三

ところが・・・ある日突然、その夢が現実となる。

なぜか怒涛の一族は、破格の待遇で門川の中枢に迎えられる事となった。


それからは生活がガラリと変化した。

大きくて立派な、御殿のような屋敷住まい。

目を見張るような贅沢な食事。

数えきれない豪勢な衣装と、ため息が出るような装飾品。


憧れていたもの、望んでいたものが全て叶った。

夢みたものがこの手に入ったのだ。

私は、有頂天だった。

門川乙女会で『塔子様』と呼ばれ、他の娘たちから頭を下げられる。

歩けば、皆が私に注目する。

私に憧れ、噂して、羨望の目で見上げる。


あの頃の私のように。

みじめったらしくて、みっともなかった私のように。


もう私は違う。あの頃の私ではない。

私は栄光を手に入れたんだ。

私は、選ばれた特別な者になったんだ!


世間は、門川当主の世襲で揉めていたようだけれど、私にはそんなこと関係なかった。

ただ、ひとつだけ。
母上の具合だけが、心配の種だった。


少し前、母上は大きな戦いに駆りだされて無事に生還して以来、どうにも体調が優れない。

怪我が回復しても、気分が優れず寝込んでばかり。

最近ではろくに家族に顔も見せず、寝所に篭もりっきりになっていた。


でも、きっと大丈夫だ。

湯水のように金を使い、普通では考えられないくらい贅沢な療養をしているのだもの。

すぐに治るに違いない。

そうだ、今度また何か、高価な見舞いの品でも贈るとしよう。