神様修行はじめます! 其の三

門川君のお母さんは、奥方の一族の息がかかった人物によって殺された。

じゃあ、その人物っていうのが、塔子さんのお母さん!?

そんな・・・そんな事って・・・。


思いもよらない展開に、あたしは戸惑うばかりで、門川君と塔子さんを何度も交互に見比べた。

門川君は両手で印を組み、冷静に術を発動し続けているように見えるけれど、塔子さんを凝視するその目は、明らかに動揺している。


その門川君の視線から目を逸らさず、塔子さんは話し始める。

ひどく苦しげな息遣いだけれど、覚悟を決めた人間の、落ち着いた声だった。


「子どもの頃、我が怒涛の一族は権力も勢力も持たない、貧弱な一族でした」



・・・でも、我が一族は、それで満足していました。

ひたすらに己の身体を鍛え、技を磨く。

その道を極める事にのみ全てを注ぎ、栄華などには目もくれない。

そんな融通の利かない、でも一本気で、実直な一族でした。


私は、そんな一族が不満でした。

まだ幼い少女だった私には、技を磨くより、したい事がたくさんあった。


他の一族の当主の娘のように、綺麗な着物が着たかった。

美しい帯を締めて、華やかな髪飾りを付けたかった。

お白粉を塗り、唇に紅をさして、胸を張って歩きたかった。


有力一族の娘達が、豪勢に身を飾り、良い香りを漂わせながら、私の前を素通りしていく。

私の存在など目もくれず、気にも留めずに。


・・・悔しかった。
憧れた。渇望した。妬んだ。

私だって一族当主の娘なのに、なぜ?

私もあんな風になりたい。

思い切り贅を凝らし着飾って、自慢げに歩きたい。

『見事なものだ。あれが怒涛の一族の塔子様だよ』

そんな風に、周りに言われてみたい。

一度で・・・一度でいいから。


そんな願いに胸を焦がし、叶わぬ夢に溜め息ばかりをつく日々。