神様修行はじめます! 其の三

派手な水飛沫が上がって、当然、激しい溶解音と白煙も上がった。

しま子は短い悲鳴を上げて、でもすぐ振り切るように酸の海の中を、凍雨君めがけて走り出した。


「がああ―――!」

しま子の両腕が、断末魔の苦しみに暴れる凍雨君の体を必死に抱きかかえる。


しま子! 凍雨君を助けるために飛び込んでくれたんだ!

でもこのままじゃ、しま子の体もすぐに溶けてしまう!
急いでしま子!


しま子は懸命に門の所まで移動して、凍雨君を肩に抱えて門をよじ登ろうとする。

「しま子! しま子頑張って!」

あたしは、門の上から二人に向かって思い切り手を伸ばした。
もちろん届くわけないけど、もう、必死だった。


「お願い、頑張ってしま子! どうかここまで来て!」


門に食い込んでいるしま子の爪が、ズルリと滑る。
見れば爪が、溶けてボロボロに砕けてる。
あれじゃ無理だ! とても登れっこない!


それでもしま子は諦めずに壁を引っ掻いて、徐々に上へと登って来た。

と思った途端、バランスを崩して酸の海に落下してしまった。

水音と共に、しま子は腰の辺りまで水に浸かってしまう。

再びあの嫌な音と白煙が、これまでにないほど大量に立ち昇った。


「があああぁ――――!!」


身を反り返し、大絶叫するしま子。
何度も何度も繰り返し叫び声をあげるしま子の体が、沈んでいく。

それがなにを意味するのか悟ったあたしは、サーッと血の気が引いた。


しま子の下半身が、溶けているんだ!