神様修行はじめます! 其の三

懸命に自分を叱咤激励したけれど、全然足に力が入らないし、腹の底から恐怖心が湧いてくる。

汗で体の表面が冷えて、風が吹くたびゾクゾク内臓が震える。

どうしても集中、できない。

・・・くっそぉぉ・・・。

くっそおぉぉ―――――!!


―― ズウゥゥ・・・

足元から、おかしな振動が伝わってきた。
なんだか門全体が震えてるような、大きな揺れを感じる。

・・・なに? ちょっとやめてよ。唯一の足場なんだからしっかりしてよ。

このクソ忙しい時に、さらに厄介事なんてごめんだからね!?


―― ズウゥンッ!

「きゃあぁぁっ!?」

いきなりガクーンと体が落下して、門から転げ落ちそうになったあたしは、必死に足場にしがみ付いた。

ぎゃあぁ! 落ちる、落ちるー!

実際、魔犬が数頭転げ落ち、塔子さんも門川君も慌ててバランスを保っている。

いったい何が起きたのかと、恐怖にざわめく心臓を騙しながら下を確認したあたしの肝が、一気に冷えた。


門が・・・
酸に侵食されて崩れてきている!?

冗談じゃない! このままじゃバランス崩れて門が倒れちゃう!

そしたら全員、酸の海に真っ逆さまだ!


―― ズズン! ズゥ・・・

振動と共に、門がどんどん低くなっていく。

どんな作用なのか分からないけど、ダルマ落しみたいに、下から削られて低くなってるんだ。

これじゃ運良く崩壊を免れたとしても、結局同じだ。
酸の海に全員沈没してしまう!


青ざめるあたしの目に、高層ビルから見下ろすようだった酸の海が、みるみる間近に迫ってきた。