神様修行はじめます! 其の三

「みんな! 頭を低くしなさい!」

あたしの後ろにいた塔子さんが、突然宙を舞った。

あたし達全員の頭上を軽やかに飛び越え、最前列にヒラリと降り立つ。

げっ!? 伸身宙返り!?
ろくな助走も踏み切りもしなかったのに、この距離と高さを飛び越えたの!?

・・・やっぱ化け物。


降り立つが早いか、その足で塔子さんは魔犬の行列に猛ダッシュする。

「でりゃああぁ!」

まるでコマのように美しく旋回する塔子さんの回し蹴りが、先頭の魔犬に炸裂した。

蹴り飛ばされた魔犬は門の下へ落下して、遥か眼下で高い水飛沫が見える。

間髪置かずに次の魔犬が襲い掛かってきたけれど、塔子さんは怯むことなくブチのめす。


次。次。そしてまた次。
片っ端から順々に、魔犬は放り投げられていく。

門の上の足場は狭いから、敵も一列に並んでゾロゾロ伝い歩いてくるしかない。

なんか、正月帰省客の高速道路みたいで間抜けな光景にも見えるけど、それを塔子さんが一頭ずつ削ってくれている。


でもこれじゃ、きりがない。
落としても落としても、新しい魔犬が現れて最後尾に着く。
このままじゃ、いつかは・・・。


―― ギャアォォッ!

不気味な雄叫びと共に、魔犬の一頭が大きく跳躍した。

塔子さんを飛び越えて、こっちに向かってくる。

しまった! こいつら飛べないけど跳躍力は凄いんだ!


あっという間に目前に迫る黒い巨体に、キラリと白い線が走った。

一直線に切り付けられ、吠えながら落ちていく黒い姿を見ることもなく、門川君は素早く体勢を整えて次の攻撃に備えている。