「うらあぁぁあ―――っ!」

巻き舌の気合一発。
塔子さんの黄金の右ストレートが、魔犬の眉間にズゴッとめり込んだ。


うわっ、すげ! 文字通り、本当に拳が埋まるほどめり込んでる!


最凶の一撃に魔犬は悲鳴すらあげられず、引っくり返って地面をゴロゴロ転がっていった。


「勝手に懐いてくるんじゃないわよ! あたしは猫派よ!」

「・・・あまり、嬉しくないのぅ・・・」

ゲンナリした顔の絹糸が、ボソッと呟いた。


―― キンッ!

皮膚が粟立つような冷気が空中に走ったかと思うと、魔犬の全身が一瞬で透明な氷に包まれ、空中で停止した。


ストップモーションの画像のように固まった体が、氷ごと地面に落下する。

氷塊に閉じ込められた魔犬に、生気は全く感じられない。


「躾のなってない犬だな! 誰だよ飼い主!」


印を組んだ凍雨君が、両足を大きく踏ん張っている。


うお、こっちもすごいよ! 今までよりも氷の厚みがハンパなく増している!


戦闘を繰り返すうちに、短期間で飛躍的に術の威力が上達したんだ!

さすがは氷血一族の当主だよ!


―― ギャアアオォォ――!


魔犬の咆哮が響き渡り、次から次に襲い掛かってきた。


今度は三匹・・・四匹?

いや、もっとか!? どんだけいるのよこの犬の集団は!


この門って魔犬専門ブリーダーか!? 繁殖してんの!?


あたしは門川君の前に立ち、素早く身構えた。


あたしも負けていられない! まだ術の使えない彼を守らなきゃ!


「来るなら来い!犬ッコロ!」


ただし覚悟しておいで!

シッポ振っても撫でてなんかやらない! 痛い目必須だよ!