神様修行はじめます! 其の三

信じて。マロ。

信じなければ始まらない。

自分の力を、幸せになれる力を信じてあげて。


そして門川君の言葉を、どうか信じて。

彼の言葉なら信じて大丈夫。あたしが保障する。

やると言ったら、もう、どこまでもやっちゃうんだよこの男は。


融通の利かなさは、いやはや天下一品。

それで散々痛い目みてるあたしが言うんだから、間違いない。


だから大丈夫。きっと端境は癒されるよ。


「一緒に頑張る仲間もいるしね」

「なか・・・ま?」


マロは、不思議そうに小首を傾げた。


『仲間』なんて、これまで端境にとって最も縁の無い言葉だったろう。


「うん、ここにいる皆が仲間だよ。このメンツ見れば分かると思うけど、ホント変わり者が多いんだけどね」


あたしは皆を見回しながら、ちょっと笑った。


「ね、多分これからマロも色々と驚く事が多いよね?」


「はい、きっとそうだと思います。ぼくも実際、ずいぶん驚きましたから」


「あたしは驚くっていうより、呆れる方が多いわよ」


「我は、頭と胃が痛む事が多いわい」


「うああ、うあ~~」


「この全員を統治する僕の心労を、一度考えて欲しいものだよ」


「なに言ってんの! 門川君が一番周りに気ぃ使わないタイプじゃん!」


あたし達はめいめい勝手に好きなことを言いながら、マロと向かい合う。


「なにしろこの人材揃いなので、馴染むのに時間がかかるかもしれないが・・・」


「大丈夫ですよマロさん! ぼくもすぐに馴染んじゃいましたから!」


「ってことでさ・・・一緒に頑張ろうよ。マロ」


呆けたような目であたし達を見ているマロの涙は、いつしか止んで、濡れた頬も乾いていた。


やがて、ぎこちなく、ゆっくりと表情が動き始める。


泣き笑いのような、なんともいえない顔で・・・


「マロ、ではなく典雅におじゃる」


その言葉を聞いたあたしは思わず、目を細めて笑った。