神様修行はじめます! 其の三

泣き叫んでいたマロは静かになって、門川君の言葉をじっと聞いている。


きっとマロも知っているんだろう。門川君が生きてきた、これまでの悲惨極まる人生を。


本当は、マロも心の奥底では分かっているんだ。

目の前の少年が、自分と同じ哀れな被害者であるという事を。


ただ・・・この少年は門川の当主。

責めずにはいられなかった。


目の前で、自分の愛する一族が苦しめられる日々。


自身の苦しみなどよりも、愛する者達が傷付けられる姿は、遥かに辛く・・・。


掻き毟られる猛った思いは、見つけた捌け口に向かって、救いを求めて激流のように流れ出す。


やっと見つけた、門川永久という、ぶつけられる相手に向かって。


でも、マロは知っている。

門川君も自分も同じなのだと。

彼は加害者であると同時に、被害者でもあるという事を。


責める事ができる相手。つまり、受け止めてくれる相手なのだという事を。


だから、届く。

きっと門川君の言葉は届く。


門川永久の言葉であるからこそ、心に届くはずだ。


「門川の当主になるべく立った時、僕は固く誓った。全員が笑って過ごせる、もう誰も犠牲にならない世界をつくると」